納期ギリギリの問題作「メトロイド」
メトロイドをご存知でしょうか。1986年にファミコンディスクシステムで販売された、2D探索アクションの名作です。自由度の高い探索、手に汗握るアクション、唯一無二の雰囲気。さあ気になった方、いますぐNintendoSwitchを買いましょう。SwitchOnlineに加入しましょう。メトロイドやりましょう。メトロイド、オモロイド。
さて、そんな神ゲーメトロイドですが、実はスケジュール的には問題だらけであったことをご存知でしょうか。なんと納期直前まで完成してなかったのです!
納期ギリギリが生み出したアイデア
「宇宙を舞台に自在に動き回って銃で攻撃」というアイデアが独り歩きし、主人公の設定も未設定、更にゲーム内容は未完成。これではまずいと、メトロイドを完成させるため第一開発部が総がかりで製作することになります。
メトロイドのシステムはこの段階で確立されていきます。
メトロイドの醍醐味である、ダンジョンを探索してアイテムを見つけていくゲームデザイン。 これはいわば、ゲームの尺を伸ばすための工夫だったようです。
メトロイドはある地点まで行くと、壁にぶつかるゲームデザインとなっています。 それらを解消するために「ミサイル」や「アイスビーム」の取得が必要となります。 言ってしまえば面倒な手間ですが、これにより一本道の単調なステージ構成から脱することができます。
「要素が足りないし、時間もない。なら、マップを工夫して、隠し通路を見つけていくゲーム性にしようと。」
「限られたパーツを使い、みんな総掛かりでやったから、いろんな人のいろんな声が反映されているんです」
メトロイドの仕上げ作業担当した坂本賀勇は、こう語っています。 限られたパーツを最大限活用する。総掛かりによるチーム一人ひとりの意見の反映、 こうした作業が新たなゲームを生み出していったのです。
初代メトロイドの課題点
さて、なんとか完成にこぎつき、全世界200万本超えの大ヒットを記録したメトロイド。 しかし本作はゲームバランスが悪く、それ故に難易度が高い作品でもあります。
まず、プレイヤーであるサムスの体力は毎回30で開始されるという点があります。 初期のサムスの最大体力は99。エネルギータンクを取得することで、体力の上限は高くなりますが、いくら体力を上げても、再スタート時の体力は30となっています。要するに、最大体力は300の状態なのに、初期体力は30。これを解消するために、プレイヤーは敵をちまちま倒し、体力を回復しなくてはいけません。ああ、面倒くさい。
また、これは僕の感想ですが、同じマップの使い回しが多くマンネリだったり、ミニマップがなかったりと、今思えばおかしなところが多かったと思います。(ちなみに同じマップの使い回しは自作の「メトロイドⅡRETURN OF SAMUS」でも目立ちますが、こちらは同じマップでも仕掛けが異なったりして、バラエティに富んでいます。)
あとなぜかしゃがみ攻撃や下への攻撃ができません。これは仕様なのかもしれないが、めちゃくちゃ不便です。恐らくキャラチップの削減の犠牲になったのだろうと考察。
結局、これらの課題点は発売直前にムリにでも完成させようとした結果なのだと思います。 ただ、後のシリーズではこれらが解消されています。
学ぶべきところ
僕は、初代メトロイドのやらかしから、以下のことを学びました。
◎1作目から完璧を目指さないほうがいい。というかムリ。
本作はシリーズ全体で見ると、あまり出来の良い作品ではないかもしれません。 しかしメトロイドシリーズは今でも人気のシリーズですし、本作のシステムは「メトロイドヴァニア」として、様々なゲームに影響を与えています。
「1作目はインパクト勝負でいいんだ」
納期ギリギリ、調整不足のゲームから僕は、そう考えました。
◎ プロジェクトとしてうまくいかなくても、結果が良ければそれで良い
本作はプロジェクトの評価としてはダメな部類に入るかもしれません。 メトロイド開発の終盤はいわゆるデスマーチだったかもしれません。任天堂第一開発部の人々には深く敬意を払うべきです。
それでも、うまくメトロイドという新たなシステムを作り上げたのですから、プロジェクトとしては成功と言えるでしょう。
「大切なのはプロジェクトではなく、プロジェクトの成果物」
そう思わされました。
◎ でも納期は守ったほうがいい!
(そういう僕は今回の記事の納期を守れなかったのですが…)
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